八咫烏の恋。

川辺の語り部の調べ
今日はアレな日だからな。
恋愛フォルダに書きためたネタでも。
むかしむかしの話だ。
武蔵の国っつー、今で言う東京埼玉神奈川らへんな、
そこに突然太陽がふたつ出て来たんだと。
太陽ふたつとか意味わかんないじゃん。
もう意味わかんないくらい暑い。
そらぁもう暑いワケだ。
昼も太陽。夜も太陽。暑い。眠れない。
この武蔵の国ってぇのは、
田んぼとか畑ばっかりな土地でさ。
まぁ実は今もそうなんだけど、
貴族とかが政治やってただいぶ大昔だから。
工場とかないから。なおさら。
で、太陽ふたつじゃん?
もうずっとサンシャイン。
田畑が乾上がるのよ。
村人超困るワケ。
食うモン無くなるし。暑いし。
しかも昔の税は現物だからね。
脱税とかヤバいっしょ。
役人こわい。超こわい。これは今も変わらない。
でも納税しろっつっても、
「いや、マジ無理っす!!太陽ふたつあるんで!!」
って言うしか無いじゃん。
米も野菜もお茶もとれないし。暑いし。眠れないし。
やっぱ行政機関はこういう時なんとかしないといかんワケだ。
今も昔も。
朝廷「太陽がふたつ?なら1コぶっこわせよ。」
って、ハリウッドのアクション映画的思考でもって、
朝廷から超凄腕の武人が派遣されて来たのよ。
っていうのも、
その太陽っていうのが、カラスが化けてた偽物だったらしいのよ。
三本足の八咫烏。『ヤタガラス』って読むらしいよ。
そんで結局、
その武人が弓を引いて太陽を射落としたのさ。
村人歓喜。夜バンザーイっつって。
民衆を苦しめる化けガラスの魔物は正義の武人に退治されて、
村に平和が訪れました。
めでたしめでたしっつー話になってるワケ。
その魔物が退治されたのにちなんで、
そこは『射る魔の里』って呼ばれる様になったんだって。
で、余談なんだけどそのカラス。
元々、昼に夜を連れてくるお使いやってたのよ。
ほらカラスって夕方なイメージあるじゃん?
この八咫烏がイイ仕事すっから、
一番星とか月も、自分ら輝けますーっつって、
基本イイ奴なの。八咫烏。
だって夜来ない日とか無いじゃん。
一年365日パーフェクト勤務ですよ。
しかもノーミス。勤続数え切れない年数。
もうトリプルA査定ですよ。
で、その仕事キッチリ八咫烏さんの職務ルートに、
もちろん武蔵の国も入ってて。
そこのちっさな村に、
女の子がいたの。
このコが夜嫌いだったのね。
夜になるとひどい事が起きるから。
家にいるのに。
まぁ大昔の田舎じゃん。そういう事もあった訳だ。
「夜がきませんように。」
って、夕方になると空に祈るの。
最初は八咫烏さんもシカトしようと思ったんですよ。
仕事キッチリ派だからね。
しかも自分の仕事全否定されてっかんね。
イイ仕事する奴ってさ、
自分の役割と能力に誇りがあるモンじゃないですか。
そらぁもう実際誇るべき責務と実績ですしね。
もう職場だったら『神がかり』って呼ばれて拝まれるレベルですよ。
あ、八咫烏さんって地方によっては神様だしさ。
それをね、
田舎の小娘の願い事に耳を貸すとかね。
これまで積み上げてきたモンとか、
「俺はこういう自分」っていうアイデンティティ的なの、
もう尋常じゃないくらいあるワケじゃないですか。
あるワケなんですけども。
そういう、自分サイドのコトが一瞬で頭からすっとんじゃうコトがね、
あるんだよね。
アレだ、恋だ。
真面目な奴は、間違いも真面目にやらかしちゃうんだわ。
いやね、八咫烏さんもわかってたんだよ。
「夜こないで。」
って祈られても悪いのは夜じゃないんだけどな、って。
でも彼女は夜を退ける事しか頭になかったの。
近しい人を憎むんじゃなくて。
もう健気としか言い様がない。
そんな健気な彼女が怯えないように、
っていう理由で太陽に化けたっていう。
たったそれだけの理由で。
で、八咫烏さんは農民を苦しめる太陽になっちゃったワケ。
っていう、恋のお話。
射落とされて燃え尽きた魔物が沈んだ場所があるハズでさ。
そっちが地名の由来じゃないかと個人的には思ってるんだよね。

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