ヤモリの足には何かが付いてる。
何かはわからないが、何かが。
彼らは壁の上を自在に動き回る。
地面を這っている水平方向よりも、壁に張り付いてる垂直方向の姿ばかり目にする。
その垂直方向の移動を可能にする、壁に張り付くための何かが彼らの足には付いてる。
それが、あの見た目に反して結構なボリュームの音を出す。
その足が、4本あるんだ。
1モーションで4打。
ダブルストロークよりも、トリプルストロークよりも細かく音を刻む。
マシンガンのような、画用紙の束の端を指で弾いていくような、細かい連続音が壁の上をものすごい速さで移動していく。
暗闇至近距離で突然聞こえることが多い。
だから、この音を聞くと全身がピタリと固まって目を見開いてしまう。
ホラー映画の主人公みたいに。あの描写は、突然の驚きと恐怖と不快感をリアルに表現しているものなのか、私が映画の影響を受けて同じリアクションでその状況に反応しているだけなのか。
ヤモリの足には何かが付いてる。