街のラクガキに上塗りされたもの。

街のラクガキあるじゃない。

高架下の壁っていうか柱とか、商店街のシャッターとか、路地裏に迫り出してる配管ボックスとかにさ。
スプレーで塗られたやつ。

相当な場数を踏んだであろう仕上がりのペイントもあれば、タムロしてるついでの暇つぶしで書いたであろう単語オンリーの下ネタもあって、上級者から初心者まで層の厚い業界なのかもしれない。ストリートラクガキ業界。

ラクガキされる場所がね、なんかここだな、っていう感じがするのがちょっと興味深い。
壁とかポールとか、地面も含めて街の全てがカンバスになり得る業界だと思うんだけど。

もし自分が塗るとしたら「ここかな」っていう場所に、やっぱり塗られてるんだよね。
塗ってる最中を人に見られたらまずい行いだからさ、いや、塗ってる最中じゃなくてもまずいんだけど。塗る塗らないの倫理を飛び越えた先の仮定でね。

「ここは塗ってよし。」

「そっちはスルーすべき。」

みたいな線引きの条件が、あるような気がするんだけど特定できない。

人目に触れづらい範囲で。
かと言って人目に全く触れない場所じゃあいけない。
時々人が通るもしくは特定の時間帯はアクティブな場所。
夜間の照明があるところ?

なんというか、『存在感』が無い場所、もしくは軽視できる場所が好まれるんじゃないかなっていう憶測。
「あ、ここ不在だからいけるわ。」
って思えるような場所。不在っていうのは、建物が留守っていうのもあるけど、なんか古ぼけてたり、時間が止まってるような感じがする雰囲気でも。

神社とか墓地とかさ。無いよね。あれは塗り手の信仰心の問題というより、「不在」っていう感じが全然しないからじゃないかしら。逆に「存在」と言えるのかは微妙だけど。

あの手のペイントはさ、元気がある時じゃないとできないと思うんだ。
疲れ果てて何もかも嫌になっちゃったサラリーマンが壁の前でスプレー振ってるイメージが全然わかない。

だから、建物の持ち主とか管理者とかの『存在感』が弱まった条件で、それを無いものと見做せる元気で以て壁に自分もしくは作品の存在を上塗りするのかなって。
塗り手の元気が強ければ、多少『存在感』が強くても塗れちゃったりするのかな。どうだろうね。