棺桶は『桶』じゃない。

棺桶がね。
『桶』じゃないよなってふと思ったんだ。

おそらく過去の形状の名残だと思う。
この国では死者を埋葬する際に桶形の棺を使っていて、その名残で亡くなった人を入れる器を棺桶って呼んでる、みたいな。
歴史の教科書で、しゃがんだ姿で埋葬された写真とか見たことあるからね。

桶型から箱型が主流になってからもうだいぶ経つんじゃないかって思う。
でもいまに棺桶。実は棺桶という長く名残った言葉によって、箱型の形状の器も『桶』と呼ぶ用法があるんじゃないかとすら思える。

音響を生業にしている人たちの間では、機材を入れて持ち運ぶ大きめの縦長の箱を「カンオケ」って呼ぶ。
たぶん棺桶から来てるんだと思う。口頭で使われてる時しか知らない言葉で、書き言葉で人に伝えるためには使わないから定かではないけど、たぶん。

機材を入れる容器としてなら桶みたいな「カンオケ」があるかもわからぬ。もしお目にかかったら、古代の名残としての言葉が、業界用語というかスラングみたいな使い方を経由して、形状だけは本来の存在に近い描写に先祖返りするかも。