『癒しのサウンド』は君だけのもの。

「バイノーラル・ビート」というサウンドの種別。
Binaural Beats。直訳だと、二つのマイクを使用して録音された、両耳別々に届く音、みたいな感じ。

左右でちょっとだけ音をずらして、それらを同時に聞くとうねりが生まれて面白いよね、っていう。
音の加工によって面白い効果を生み出す特殊効果。

それでさらに面白いことに、このバイノーラルビートが、脳にヒーリング効果をもたらすんだって。
すごいよね。
睡眠の質の向上!
ストレスの解消!
集中力の向上!

ホントかよ!眉に唾だよ!

そんなネットの情報をかき集めて、私も作った。結果、楽しかった。

作り方は簡単。
お手持ちのシンセで基音となるサイン波を出すよ。テレビの放送が深夜に終わって「ポー…」って鳴ってるあの機械音みたいなやつね。440Hzの音を左に全振り、443Hzの音を右に全振り。
これでバイノーラルビートOK!3Hzの差で「うゎんうゎんうゎん…」って音が揺らいで聞こえるよ。
あとはお好みの音で飾り付けてヒーリングっぽい雰囲気を出したら完成。
深さと広さを感じるふわーっとした音で夜空っぽい感じにしてみたよ。メロディアスだったりパーカッシブだったりすると気を取られちゃうからなんとなく音が鳴ってる、みたいな状態を目指した。

このサイン波にどの音程を使うかによっても効果が変わるっていう説がネットで散見される。
『ソルフェジオ周波数』って呼ばれてるよ。
「遺伝子の修復」なんて効果も謳われてて、これはちょっとわからない。
何故なら遺伝子が壊れてる感覚がわからないからな。

「癒しの波動」みたいな扱いを受けてるけど、このソルフェジオ周波数をタイトルにした音楽は、
特定の周波数だけを聞き続けるっていうよりは、優しいサウンドにこの周波数が含まれてる、っていう感じでさ。
「528Hzで完全なる癒し」みたいに言われてるけど、自然界の音にも、人の声にも、楽器の音にも、だいたい528Hz帯域は含まれてるんだよね。
だから、癒し効果については「心地よいと感じた音、全部」だと思ってる。
好きな曲をきこう。好きな曲をさがそう。

バイノーラルビートの癒し効果についてもさ。
人間の熟睡時の脳波が「デルタ波」っていう名前で、4Hz未満の周波数なんだよね。
で、これと同じ揺らぎを持つ音を聞いたら熟睡できる、っていう理屈っぽいんだけど、

外から聞く音の揺らぎの周波数差分と、熟睡してる時の脳波を一緒にしてどうするんだい?
という疑問に答えが得られない。

脳波は、眠りに入って変化していくものでさ。体の反応としての結果なんだよね。
揺らぐ音で脳波が切り替わるわけじゃあない。気持ちよく眠ったらデルタ波が出てた、っていう。
だから「うゎんうゎんうゎん…」のバイノーラルビートも、これが心地よいって感じられる人は熟睡できて、できない人はできない。
眠りやすい音は、やっぱり「心地よいと感じた音、全部」なんだよね。

バイノーラルビートとか、ソルフェジオ周波数よりも、
もっと体がわかりやすく反応する音。

例えばさ。
昔一緒に暮らしてた犬がさ。
父の靴音が外から聞こえてくると、
玄関にものすごい勢いでダッシュしていって、しっぽというか、もうお尻から振り乱すほど全身から「嬉しい!」をほとばしらせてたんだよね。彼女にとっての父の靴音はさ、最高にハッピーを作るサウンドだった。
キッチンで聞いた好きな人の鼻歌みたいにさ、音そのものの心地よさに、経験がさらに加わった最強に心地よいサウンドとかさ。

こういう、僕だけの、君だけの心地よい音、っていうのが癒しの音だっていうのが現時点での私の結論だよ。

それはそうと、さっきの、作った音源、気に入ってもらえたら嬉しいよ。
この試み自体は楽しんでやってたからね。作ってる間楽しかったのはバイノーラルビートの効果かしら。珍しい試みだったからかな。どうかな。