時間とか人の手、テクノロジー、そういう労力とか、それらと交換されるお金ががたくさん加わった、一言で表すと『高級な』場所は、足音もお高い。
床材の下に空洞が無い、密度の高い音。
ヒールでコツっと、もしくは厚いカーペットでファサっと。
「人の手が加わった度」で言ったら、ラグジュアリィなホテルほどではない、
プレハブ小屋の床とかは、一枚隔てた向こうに空間がある音がする。
ドラマを見てた時に、悪い組織のボス的なキャラの根城っぽい場所の大きなお屋敷が、
この軽い床材で空洞のある音してたんだよね。
悪い組織の人達はさ、たいてい黒服じゃない。ピシャーっとした。靴も革靴でさ。
合わないのよ。
黒服が工事中の建物に忍び込んで悪さの仕込みするシーンで、ギャップを強調するとかならいいのよ。革靴をゴツゴツ言わせる音で「ああ、ここ作りかけなんだ。」って伝わるしさ。
でも普通にボス的な人鎮座してたからね。合わないのよ。
プレハブ小屋の床は、長靴で踏むこもった音だとなんか落ち着く。
たぶん過去にこの組み合わせで慣れ親しんできたからだと思う。
「この組み合わせはよくあるよな。」っていう靴と床材のコンビネーションが、普段から考えてるわけじゃないけど頭の隅の辺りにきっと蓄積してて、それと大きく外れる組み合わせに対しては違和感が返ってくるっていう。
個人差は多少あるかもしれないけど、おおまかに共通な認識のカバー範囲はある。
ターミナル駅の改札周辺がさ。
もし全部、木の板張りだったらラッシュ時とかきっと大変だよね。あの冷たくて硬い音の雨が、絶え間ない雷鳴みたいになるよね。
朝の通勤風景としては違和感が働くんじゃないかな、っていうね。
足音のお話。