探し当てる、気持ちの良い音。

音の良し悪しは、状況とか組み合わせとか、場所、時代、その時の気分によって変わる。

故に。絶対的に究極に完全な『良い音』というものがトップオブトップに不動で鎮座していることはない。
だから、その時代その日その夜の最高の音をつくり出せる、つくり出そう、という創意や希望みたいなものが音楽の民の心で今もなお熱を帯びていることと思う。

とはいえ。

「気持ち良い音」というのは、結構、不動に「これ!」っていうものがあるのではなかろうか、と思った。

時速80kmとか100kmとかで投げられたボールを、バットで打つと。
一番気持ちの良い音は、芯を捉えたあの音じゃない。
触覚的な気持ち良さと、聴覚的な気持ち良さが一致してる。不思議だよね。
でもあれは、手応えとしての気持ち良さ、力が一番強く伝わってボールが遠くに飛ぶ気持ち良さによって、気持ち良く感じるようになった音とは思えない。
野球を全く知らない人が、グラウンドの側を通りかかった時に聞こえた時でも「今、気持ちの良い音がしたな。」ってきっと思うはずだよ。

だから「このバットと、このボールの組み合わせで出せる最も気持ちの良い音はこれ」みたいなユニークな音が一つ存在する。

キャッチャーミットでボールを受ける時にもある。
スイートスポットというか、「パアァン!!!」って気持ちの良い音が鳴る場所が。
そのポイントで受ける時もまた、触覚的にも気持ちが良い。強い球でも痛くない。
少年キャッチャーはその音が出せる捕球の仕方を練習する。あの音はキャッチャーはもちろん、ピッチャーの気分も大いに高めてくれる。

だから、音が出る要因となる組み合わせ、バットとボールとか、ミットとボールみたいに。
探せば一つだけ存在する「これ!」っていう音がある。

当然、楽器にも最も気持ち良い音が出る場所探しをしていたら、きっと報われる日が来る、っていうお話。