街宣車は、今日も軍歌っぽい曲を流しながら走る。

日曜日になるとさ。

外から結構大きめのボリュームで軍歌っぽい曲が聞こえてくるんだよね。
なんで軍歌っぽいって感じるんだろうな。

要因の一つが音質なのは確か。
ラジオ体操とか、盆踊りで使われるようなスピーカーの音。
柔らかく割れて、重さと細かさを持たない、レトロなサウンド。

ラジオ体操とか盆踊りと違って当たりが強く感じるのは、含まれてる音の数が多い。
そしてボリュームが大きい。
きこえてくると、元栓開けすぎな公衆トイレ流したみたいな焦りを感じる。
何を歌ってるのかわからないけど「ああ、街宣車だ。」ってわかるあの音。

何かを主張して伝えたい人達が、定期的に走り回ってるわけだから、何を歌ってるのかわかった方がいいよね。

仮に音質を変えるとしてさ。

新宿とかでさ、大きな通りに。
アイドルみたいなホストもしくはホストみたいなアイドルのアー写が車体いっぱいに貼られたトラックが大音量で曲流しながら走ってたりするじゃない。

あの音はさ、ちゃんとハイファイに聞こえるんだよね。
歌詞も聞き取れるしさ。
だから、郊外を走る街宣車もさ、高音質で曲流しながら走ることも可能なんだよね。技術は既に確立されてる。

でもさ。郊外の県道を走る街宣車が、新宿で聞こえてくる「バーニラバニラ」みたいな音質で何かを喧伝してしまったら、街宣車を街宣車たらしめている何かが抜け落ちてしまう気もするんだよね。

音質が、雰囲気を演出したり、アイデンティティを支えてたりすることがあるよね、っていうお話。